株式会社エレクトリ 
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SIT-5
■価格: 1,980,000円(税込 ペア) / 1,800,000 円(税別 ペア)

SIT-5は、First Wattが精算した細心のアンプであり、静電誘導トランジスタ(SIT)をパワーアンプ増幅素子として使用する5番目のモデルです。

SITシリーズの歴史

2011年に、セミサウス社製(SemiSouth)のFirst Watt専用SIT出力素子:カスタムシリコンカーバイド”(SiC)トランジスタを使用した最初のSITアンプ"SIT-1"を設計しました。このアンプは、フィードバックなしでシングルエンド純A“コモンソース”モードで動作する単一のパワーデバイスを使用して、トライオードの特性を模倣しつつ、スピーカーに直接必要な電圧と電流で動作し、出力トランスを排除して10ワットの電力を提供しました。
モノブロックのSIT-1の成功に続き、SIT-2が登場しました。SIT-2は、より高い効率で同様の性能を提供し、ステレオアンプ構成でした。2018年には、SIT-3の製造が開始されました。SIT-3では、再びフィードバックを使用せずにSITトランジスタをコモンドレイン(フォロワー)モードで動作させました。数年前、SemiSouth社は倒産に見舞われ、私たちはこの特別な部品をさらに入手することができないことに気づきました。
しかし、日本の会社のトーキン(Tokin)がありました。彼らは、オーディオ用に適した産業用シリコンSIT部品を製造していました。その生産工場は福島の震災で壊滅的な被害を受けましたが、私たちは数年かけて既存のトーキン(Tokin)の在庫からこれらの部品を入手することができました。
この大型のトーキンSITは、元のSITと同じトライオードの特性を持っていますが、当社のオリジナルSITよりも高い電圧、電流、定格電力を実現しています。SITは、1950年代に日本で発明された特別なタイプのJFETで、1970年代にソニーやヤマハから登場した「Vfet」と呼ばれるパワーアンプで人気を博し、現在でもハイエンド・オーディオで高く評価されています。しかし、SITの製造の難しさと費用の高さから、後のバイポーラトランジスタと比較して競争力が低下しました。そのため、SITの優れた特性がハイエンド・オーディオ向けに再認識されたのは比較的最近のことです。
SITデバイスは、オーディオアンプに特に価値のある独特の特性を持っています。発明者の西沢氏の特許要約を引用すると、「(SITの)ドレイン電流とドレイン電圧の特性は、トライオード真空管の陽極(アノード)電流と陽極(アノード)電圧の特性を非常に近似してシミュレートされます。」となっています。トライオード真空管と同様に、SITの特性曲線は、2次および3次高調波の相対的な値を決定し、高次歪みがほとんどないクラスA「負荷線」での動作を可能にします。より高次の歪みをほとんど生じさせません。現在では最も魅力的なサウンドは、支配的な2次高調波の特性に続く、より低い高次の高調波の値から生じる傾向が一般的に観察されています。
SITは、電子レンジ、レーダー、その他の様々な分野で引き続き使用されていましたが、ソニーとヤマハが生産を停止した後、オーディオアンプからはほとんど姿を消しました。最近、再びSITに対する関心が高まっています。その理由のひとつは、オーディオ・パワー・アンプに適した新しいデバイスを製造するために、いくつかの会社が立ち上がり、必要な資金を費やしたからです。そのひとつはファーストワットで、SIT-1、2、3にセミサウスのシリコンカーバイド50ワットデバイスを使用しました。SIT-4、SIT-5は、10ワット/チャンネルのアンプで、600ボルト、30アンペア、400ワットのトーキン(Tokin)THF51を使用しています。SIT-5は、同じ出力素子を使用するSIT-4と比較すると使用方法に大きな違い( 特徴)があります。回路の心臓部を形成するトランジスタ(SIT出力素子)は、コモンドレイン・モードと呼ばれるSIT-4とは完全に異なったモードで動作します。一般的に3つのピンを持つ出力素子は、以下の3種類のモードのいずれかで動作します。
(例:FET:コモンソース・モード、コモンドレイン・モード、コモンゲート・モード)

モデル 出力素子 動作モード
SIT-1 First Watt専用のセミサウス社SIT出力素子 コモンソース・モード
SIT-2 First Watt専用のセミサウス社SIT出力素子 コモンソース・モード
SIT-3 First Watt専用のセミサウス社SIT出力素子 コモンドレイン・モード
SIT-4 トーキン(Tokin)THF51 SIT出力素子 コモンソース・モード
SIT-5 トーキン(Tokin)THF51 SIT出力素子 コモンドレイン・モード

SIT-4では、SIT素子はコモンソース・モード(ソース接地)で動作し信号がゲートに入力され、増幅されて位相が反転した信号はドレインから出力されます。ソースはグラウンドの役割を果たします。このモードでは、電圧と電流の両方が増幅され、反転した位相はスピーカーターミナルによって正相に戻されます。
SIT-5では、SIT素子はコモンドレイン・モード(ドレイン接地)で動作します。信号がゲートに入力され、増幅された信号はソースから出力されます(位相は反転しません)。
このモードでは、電流のみが増幅され、電圧はBipolarおよびMOSFETによって増幅されます。SIT素子は、どちらの方法でもフィードバックなしに適確に増幅動作を行いますが、コモンドレイン・モード(ドレイン接地)においては、より低歪み、低ノイズ、高ダンピングファクターが得られます。引き換えに電圧増幅用の回路の追加が挙げられますが、得られる音質向上の点から見れば、妥協可能な小さな要素になります。コモンドレイン・モード(ドレイン接地) は、シンプルなスペクトル歪み特性を示し、増幅と二次高調波をはるかに低い歪み値で制御できます。

特徴

右図はSIT-5の回路を簡略化したものです。シングルエンドのRCA入力から、コンプリメンタリーを使用したプッシュプル電圧ゲインステージ、フィードバックなしのコモンドレイン(フォロワー)モードのハイパワーSITを使用したほぼシングルエンドのクラスA出力ステージを示しています。
このSITの定格は600ボルト、30アンペア、400ワットで、周波数特性は50メガヘルツです。これは、500ボルト、40アンペア、890ワットの定格を持つPチャンネル・モスフェットを介して、マイナス60ボルトの電源レールによって電流バイアスされます。
この配置がユニークなのは、SITがPチャンネル・モスフェットによってシングルエンドのクラスAバイアス電流を与えられ、出力への寄与が通常約20%と小さくなっている点です。これは、出力が2組のパワー抵抗とコンデンサーを経由する回路図の右側に示されています。これらのパワー抵抗と2つの出力コンデンサーの比率を調整することで、SITの負荷ラインをトリミングし、SITが出力特性を支配するようにすることができます。







仕様

入力インピーダンス 100KΩ
ゲイン 19dB
最大出力(8Ω) 35 watts @ 1% THD
周波数特性 5Hz ~ 200KHz(-3dB)
ノイズ 30uV unweighted,20-20KHz
消費電力 200watts
外形寸法 43.18 W x 40.64 D x 17.15 H cm
重量 14.5kg

製品画像




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