マスタリング・コンプレッサー
SPLのマスタリング・コンプレッサー「IRON」は,伝統的なヴィンテージ・チューブ・コンプレッサー技術とSPL独自の120Vテクノロジーを融合した新しいコンプレッサーです。
Thresholdでは,コンプレッサーの効きはじめるレベルを決定します。設定した値を超えた信号に対してコンプレッサーが動作します。Threshold以下のレベルの信号に対してはコンプレッサーは動作しません。41ステップのポテンショメーターで細かく調整できます。
Tube Biasでは,真空管のグリッドにかかる電圧を3段階で切り替えます。
グリッドにかかる電圧を高くすると,真空管のカソードからアノードへの信号が減少し,結果的にコンプレッションのかかりが強くなります。このグリッドへは,Threshold,Rectifier,Side Chain EQ,Attack,Releaseのパラメーター設定後の信号が送られます。
Attackでは,コンプレッサーのレスポンス時間を設定します。これは設定したThreshold値を超えた信号に対して,コンプレッションが効き始めるまでの時間です。SlowからFastまで6段階の設定が可能です。
※ IRONでは他のパラメーターの設定によって変化するため,具体的なアタックタイムを表記していません。
Releaseでは,信号がThreshold以下になったときのコンプレッサーのプロセス解除までの早さを設定します。Attackと同様にSlowからFastまで6段階に設定が可能です。
Rectifierでは,6つの異なる制御特性曲線のいずれかを選択できます。最初の5つのポジションでは,ピュアゲルマニウム,シリコン,LEDのキャラクターカーブを得られます。この各キャラクターはAttackやReleaseの時間に影響を与え,0.1msから5sまでのタイムレスポンスキャラクターを持ちます。最後のポジションに用意されたゲルマニウムとシリコンのコンビネーションのキャラクターは,より早い0.2msから300msのタイムレスポンスを持ちます。
Side Chain EQでは,コンプレッションのレスポンスを一定の周波数レンジに影響させることができます。例えば低域をカットした場合,コンプレッサーはキックやベースラインへは素早い反応をしなくなります。別の周波数に対しても同じような効果を得ることが可能です。ある周波数帯域をブーストすればコンプレッサーはその帯域に敏感に反応します。サイドチェイン・フィルタは,実際の音声ではなく,コントロール信号のみ影響を受けます。
IRONのサイドチェインEQには6ステップのスイッチがあり,Off,4種類のプリセット,外部サイドチェイン信号を選ぶことができます。Offのポジションの時には内部のコンデンサーにより20Hz以下の帯域はカットされ,ポジション2~5はプリセットされたカーブでフィルタリングされます。外部サイドチェイン信号を選択した場合は,IRONのリアパネルにあるジャックに入力された信号によりIRONコンプレッサーがトリガーされます。
エフェクト処理された素材を客観的に判断する際,Auto Bypass機能を使うことで,元の信号と処理された信号を手動ではなく,設定したインターバルで自動切り替えすることができます。モニタリング・ポジションから移動せずに,より集中して評価ができるということは大きな利点となります。
多くの場合,ミュージックプロダクションにおいてマスタリングは最終的な行程となり,音声信号に対して過度の修正や加工は望まれていません。そのような理由から2種類のパッシブフィルターと120V SUPRAオペアンプの組み合わせを用意しました。